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カッター工事によってコンクリートやセメントを切断すると、粉じんが発生します。これが冷却水と合わさることで汚泥水が生じます。この汚泥水の適切な処理の仕方やその必要性、処理が不適切だった場合の罰則規定について解説をしています。
通常、カッター工事は冷却水を流しながら切断作業を行います。この冷却水と切断時に生じる粉じんが合わさって生まれるのが「カッター汚泥」と呼ばれるものです。
汚泥とは言うものの、大量の水分を含んでいることでその形状はほぼ液体であり、イメージとしては廃液に近いものになります。そのため、汚泥水と呼ばれることもあります。
この汚泥水は産業廃棄物として適切に処理しなければなりません。
汚泥水にはアスファルトの粉や骨材粉が混ざっており、発がん性物質を多量に含んでいます。
河川に流れ込んだり、乾燥したあとに粉じんとなって飛散したりした場合、動植物や人間への影響が懸念されるため、適切に処理を行う必要があります。
産業廃棄物の処理が適切でない場合は、環境省によって三段階で処分が下されます。
まずは行政指導。これは法的強制力はありませんが、協力しない場合に次のステップへ進む、という警告を意味します。
もしここで処理方法を改善しない場合は行政処分を受けます。これは改善命令・措置命令・業務停止命令・許可取消処分のどれかを受けることになります。
この行政処分にも従わない場合、最大で5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金が科せられることになります。
参考:環境省公式HP/法令・告示・通達[pdf](https://www.env.go.jp/hourei/add/k040.pdf)
参考:神奈川東京@産業廃棄物許可ドットコム/行政指導と行政処分(https://www.yy-sanpai.com/cat-3/606.html)
カッター工事では、作業の特性上、汚泥の発生が避けられません。そしてこの汚泥は、法律に基づき適正に処理しなければならない産業廃棄物です。国のルールに則った処理が求められるため、信頼できる業者選びが非常に重要になります。
カッター工事の依頼先を選ぶ際は、汚泥の収集から処理までを自社で一貫して対応できる業者を選ぶのがおすすめです。以下のようなメリットがあります。
カッター工事には複数の工法がありますが、なかでも**「ドライカッティング工法」**は、汚泥の発生を大きく抑えられる点で注目されています。この工法は水を使用せず切断を行うため、汚泥の発生量が少なくなり、結果的に処理コストも削減できるというメリットがあります。
環境負荷や処理の手間を減らしたい方は、ドライカッティングを採用している業者を選ぶのも有効な選択肢です。
業者を選ぶ際には、次のような点も事前に確認しておきましょう。
下記のページでは、工事場面に合った工法・特徴で選べる富山のおすすめカッター工事会社3社を紹介中。一部、汚泥水処理を同時にできる会社も紹介しています。業者選びでお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
汚泥水が発生する工事を依頼する場合には、書類上の手続きが必要です。
工事の依頼主は、排出業者として汚泥水を収集・運搬する業者、処分を委託する業者との契約が必要です。
その後それぞれの業者の情報をもとにして、「マニフェスト管理伝票」を発行します。マニフェスト管理伝票は廃棄物が最終処分まで適切に処理されることを証明する書類で、5年間の保管が義務づけられています。
通常、これらの手続きは業者がサポートしてくれます。依頼時にきちんと相談をしましょう。
参考:株式会社 三和工業公式HP/汚泥処理(https://www.sanwa-cutter.com/?page_id=373)
参考:東海カッター興業公式HP/汚泥水処理リサイクル(https://www.tokai-cutter.co.jp/service/processing.html)
参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター/産廃知識 マニフェスト制度(https://www.jwnet.or.jp/waste/knowledge/manifest/index.html)
カッター汚泥は、コンクリートの粉塵や切削された石材、汚れた水を含んでいます。適切な処理を行わないと環境汚染を引き起こす可能性があるため、厳密な手順に基づいて処理されます。
ここでは、一般的なカッター汚泥の処理プロセスを詳細に説明します。
カッター汚泥が発生した現場では、まず汚泥を効率的に回収する必要があります。カッター工事中に発生する水と混じった汚泥は、適切な収集装置を使用してその場で回収されます。
一般的には、吸引車や特殊なポンプ装置が使用され、これにより汚泥が迅速に回収されるだけでなく、作業現場が汚れるのを防ぎます。現場に応じて、大型のタンクやコンテナが用意され、回収した汚泥を一時的に保管します。
回収されたカッター汚泥には、コンクリートやアスファルトの微粒子、土砂、石などの固体物質と、切削作業で使用された水が混じっています。そのため、最初に固体物と液体を分離するプロセスが必要です。固液分離装置を使用して、砂利や細かな石を分離します。
これにより、液体成分と固形物成分が分けられ、それぞれ適切な処理が行える状態に整えられます。
分離された液体成分には、依然として多くの水分が含まれているため、脱水処理を行います。脱水には、遠心分離機やフィルタープレスなどの装置が使用され、汚泥の水分を絞り出します。
この脱水プロセスによって、汚泥の体積が大幅に減少し、後の処理や輸送が効率化されます。脱水によって取り除かれた水分は再利用されることがあり、処理のコスト削減にも貢献します。
処理過程において、汚泥から有用な資源を抽出する取り組みが行われることもあります。特に、水リサイクル技術を活用して、脱水過程で除去された水を再生水として再利用するケースがあります。
この再生水は、次のカッター作業や他の工業用水として使用することができ、環境負荷の軽減につながります。また、汚泥から取り出された砂や石も、特定の条件下でリサイクル資材として活用される可能性があります。
脱水処理後の汚泥は、産業廃棄物として分類されます。そのため、法令に基づいた適切な処理が必要です。固形物は、専門の廃棄物処理施設へ送られ、焼却や埋立によって安全に処分されます。
環境への影響を最小限に抑えるため、排水処理に関しても厳格な基準が設けられており、適切な処理が施されます。
汚泥処理において重要な要素の一つが、処分場までの安全な輸送です。
処理されたカッター汚泥や脱水後の廃棄物は、特定の許可を受けた産業廃棄物運搬業者によって、法規に従い適切な処分場まで輸送されます。輸送に使用される車両は、汚泥が漏れ出さないよう密閉された構造になっており、輸送中の汚染を防ぐための措置が講じられています。
最後に、処理の完了後には処理内容や廃棄物の状況が記録されます。この報告書は、法令に基づいて行政機関や関連する監督機関に提出されることがあります。適切な廃棄物管理が行われたことを証明するために、この報告が重要です。
また、処理業者はクライアントに対しても報告書を提出し、透明性のある対応を行うことが求められます。
カッター汚泥は、「産業廃棄物」として適切に処理をするように決められています。2012年3月、環境省と国土交通省より通知が出されており、違反した場合は罰則の対象ともなります。
カッター汚泥は、地面に浸み込む前にバキュウームポンプで吸引して容器に回収します。地面に浸透させたり、側溝に流してしまったりすると、不法投棄と見なされるため、くれぐれも誤った方法での処理は行わず、正しい方法での処理を行いましょう。
カッター汚泥の品目について、環境省と国土交通省は言及していません。湿式のカッターから出た濁水はその性状から「汚泥」、乾式のカッターから出た粉体は発生形態から元のアスファルトと同様に「がれき類」や「廃アルカリ」など、分類は自治体によって異なります。詳しくは各自治体に問い合わせて確認するようにしましょう。
通常の汚泥と同様に、蓋付きのドラム缶やペール缶で、転倒しないよう車体と結束した上で運搬する必要があります。
なお、産業廃棄物を運搬するには、産業廃棄物収集運搬業の許可が必要です。下請け業者や委託して依頼する際には許可が取れているかも確認するようにしましょう。
アスファルトのカッター工事において発生する汚泥水は「カッター汚泥」と呼ばれています。これには多量の発がん物質が混ざっていることがあるため、産業廃棄物として処分する必要がありますので、注意すべき点をしっかり知っておきましょう。