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工場のボイラーや焼却炉、銭湯などに使われてきた煙突は、設備の更新や廃止にともなって解体の対象になります。煙突は高さに対して断面が小さいため、通常の建物と同じ手順では解体できません。
さらに、内部の断熱材にアスベストが使われていたり、焼却施設の煙突ではダイオキシン類を含む付着物が残っていたりと、構造以外にも事前に確認すべき項目が多くあります。
煙突解体は、建物の解体と比べて計画段階で検討すべきことが多い工事です。主な理由は次の3つです。
煙突は数十mの高さになることも珍しくありません。重機のアームが届かない高さでは、足場やゴンドラを使って上部から少しずつ解体していく必要があります。解体したコンクリート片やレンガが予期せぬ方向に落下すると重大事故につながるため、落下防止の養生と立入禁止範囲の設定が欠かせません。
工場やプラントの煙突は、稼働中の生産設備や配管、電気設備に近接して建っているケースが多くあります。解体中も工場の操業が続くことが多いため、周辺設備への飛散物・粉塵・振動の影響をどう抑えるかが工法選定の大きな条件になります。
古い煙突では、内側の断熱材に石綿(アスベスト)含有建材が使われている場合があります。厚生労働省も、煙突内部に石綿含有断熱材が使われていることを知らない業者が少なくないとして、関係団体へ注意喚起を行っています。
また、廃棄物焼却施設の煙突では、内部にダイオキシン類を含む付着物が堆積している可能性があります。有害物質の有無によって、解体前に必要な調査・除去作業と使える工法が変わります。
煙突の解体工法は、煙突の材質(鉄筋コンクリート造・レンガ造・鋼製)、高さ、劣化状況、敷地の広さ、周辺環境によって選ばれます。1つの工法だけで完結させず、高所は切断や手壊し、低所は重機というように組み合わせるのが一般的です。
煙突の周囲や内部に足場を組み、頂部からハンドブレーカーやハンドクラッシャーなどで少しずつ壊していく工法です。解体ガラは煙突内部に落とし、下部の開口から搬出する方法がよく採られます。
大型機械を据えられない狭小地でも施工できる反面、高所での人力作業が中心になるため工期が長くなりやすく、作業員の安全管理にも手間がかかります。近年は、移動昇降できる作業足場を煙突に取り付け、上部から順に足場を下げながら解体する工法も大手ゼネコンなどで開発されています。
ダイヤモンドワイヤーを煙突の筒身に巻き付けて高速で回転させ、煙突を水平方向に輪切りにしてブロック単位でクレーンで吊り降ろす工法です。打撃を伴わずに切り離すため、ガラの飛散や振動を抑えながら、大きな単位で解体を進められるのが特徴です。
切り離したブロックは地上で小割りするため、高所での破砕作業を減らせます。工場の稼働設備に囲まれた煙突や、粉塵・飛散物を極力出したくない現場で選ばれる工法です。
一方で、吊り降ろしに使うクレーンの設置スペースと、ブロック重量に見合った揚重計画が必要です。また、劣化が進んだ煙突では切断時に想定外の崩れが生じるおそれもあるため、事前に躯体の状態を調査したうえでブロックの大きさや切断位置を決めます。
高さがある程度まで下がった段階、または低い煙突では、ロングアームの解体重機で圧砕・破砕して解体します。作業効率がよく工期を短縮できますが、重機の搬入路と作業スペースが必要で、騒音や粉塵も発生しやすくなります。高所は手壊しや切断、地上から届く高さ以下は重機というように併用されることが多い工法です。
煙突の根元の片側を先行して解体し、ワイヤーで引き倒したり、爆薬で根元をくさび状に発破したりして、敷地内に倒してから地上で解体する工法です。高所作業を大幅に減らせ、工期も短くできます。
ただし、倒す方向に十分な空き地が必要で、倒壊時の衝撃や粉塵も大きくなります。敷地に余裕があり、周辺に稼働設備や建物がない条件でなければ採用は難しい工法です。
| 工法 | 向いている現場 | 検討時の注意点 |
|---|---|---|
| 上部からの手壊し | 狭小地、機械を据えにくい現場 | 高所作業が長期化しやすく、足場計画と落下防止が重要 |
| ワイヤーソーによるブロック切断 | 稼働中の工場・プラント、飛散物や粉塵を抑えたい現場 | クレーンの設置スペースと揚重計画、事前の劣化調査が必要 |
| 重機解体 | 低い煙突、搬入路と作業スペースがある現場 | 騒音・粉塵が出やすく、高所部分は他工法との併用になる |
| 転倒解体 | 倒す方向に広い空き地がある現場 | 倒壊時の衝撃・粉塵が大きく、周辺条件の制約が厳しい |
開口部の形成や筒身下部の穴あけにはコアードリリング工法、火気や大きな音を避けたい箇所の小割りにはバースター工法のような静的破砕が組み合わされることもあります。
解体工事では、規模にかかわらず着工前に石綿含有建材の有無を調査することが義務付けられています。煙突の場合、筒身内側の断熱材・ライニング材や、煙突下部に落ちている断熱材の破片まで確認対象になります。
石綿含有建材が見つかった場合は、湿潤化や隔離養生などの飛散防止措置をとったうえで、解体に先立って除去作業を行います。除去した建材は種類に応じて特別管理産業廃棄物や石綿含有産業廃棄物として処理する必要があり、費用と工期にも影響します。
廃棄物焼却施設の解体では、厚生労働省の「廃棄物焼却施設内作業におけるダイオキシン類ばく露防止対策要綱」に沿った対策が求められます。この要綱では、焼却炉や煙道設備などとあわせて煙突も対象設備とされ、煙突下部の付着物のサンプリング調査が定められています。
ダイオキシン類の再発生やガス化を避けるため、焼却施設の解体では溶断をできるだけ避け、せん断や機械的な切断による解体を選ぶ考え方が示されています。熱を加えずに躯体を切り離せるワイヤーソーなどの切断工法は、こうした現場の条件とも相性がよい工法です。
煙突解体は、解体そのものよりも前段の調査と計画に時間がかかる工事です。一般的な流れは次のとおりです。
なお、ワイヤーソーなどの湿式切断では切断水(汚泥水)が発生します。高所から流れ落ちる切断水の回収方法も施工計画に織り込んでおきましょう。
煙突解体は、解体業者・アスベスト除去業者・切断業者・揚重業者など複数の専門業者が関わることの多い工事です。依頼先を検討する際は、次の点を確認しておきましょう。
切断から汚泥水・ガラの処理まで一括で任せられる業者を選ぶと、業者間の調整や書類の手間を減らせます。工事担当者の負担を軽くするうえでも、対応範囲の広さは重要な比較ポイントです。
煙突の解体工事は、高所作業と落下物のリスク、周辺設備への配慮、アスベストやダイオキシン類などの有害物質への対応が重なる難易度の高い工事です。工法は手壊し・ワイヤーソーによるブロック切断・重機・転倒解体などがあり、煙突の材質や劣化状況、敷地条件に合わせて組み合わせて選びます。
とくに稼働中の工場やプラントの煙突では、飛散物や振動を抑えながら大きな単位で切り離せるワイヤーソーによる切断工法が有力な選択肢になります。煙突解体を検討する際は、現地調査と有害物質の調査を早めに行い、煙突の施工実績があるコンクリート切断の専門業者へ相談しましょう。